YAMAHA QY10

 

ある夜(たしか暑い時期の深夜だったと思う)テレビを観ていると、YAMAHAの新製品を何人かの素人さんに宣伝してもらって、その優劣を競うといったような内容の番組を放送してました。もう8年か9年ぐらい前の話です。その新製品というのがQY10で、番組を観ながら、あれ一台で曲作りができるのか、と指をくわえていた日から数カ月後、友人Sの父親がQY10を買ってきたという次第。それ以来、私はSと交代で1週間ずつ、QY10を使えるようになったのです。以後もSには何かと機材を触らせてもらったりすることになる、感謝。

ファミリーコンピュータ、ディスクシステムの「オトッキー」や、MSXの「シンセサウルス」を除くと、私が生まれて始めて触った機材がこのQY10です。エフェクトもなく、音色エディットはできず、音色の種類も少ないけれども、当時、シンセやシーケンサをいじり始めるにあたって、QY10からというのは最良の選択だったといえるでしょう。マニュアルはビギナーにも分かりやすく書かれてあったし、機能が制限されているということは、使いやすいということですから。ただし機能が制限されているといっても基本的な部分は充分で、逆に過剰にユーザーのことを考えていないだけに、自由度が高いということもいえます。たとえばパターンとして扱える4つのトラックを独立して入力できる点(QY20やMC303ではパターンの全トラックをまとめてひとつとして入力するため、ベースはパターン1でドラムはパターン2といった設定ができない)や、入力ステップ数を、決められた音符の長さだけではなく任意に設定できたこと(これができると曲のテンポに合わないディレイを打ち込むのが容易)などはかなり有効です。
当時は他に触る機材がなかったので、とにかくQY10は使い倒しました。以下にその拙いワザを幾つか挙げますので、初心者の方(今さらQY10の初心者なんていないか)は参考にしてみてください。

 1. 手にしてまず最初に、極端に高い音や低い音を鳴らしました。めちゃくちゃ低いディストーションギターは嵐のように"ゴー"とか鳴りますし、ビブラフォンを高くしすぎるとヘロヘロした音になります。低くしても高くしても、基本的にSEっぽい音になります。SEっぽい音ってのは、必要ないひとはぜんぜん使わないけれど、私は他の音色と同じレベルでふつうに使ってました。

 2. QY10ではパンはレフト、センター、ライト、の3つで固定なので、LとRに同じ楽器で同じ演奏をさせ、ベロシティを調整すると多少ぎこちなくではありますが、パンニングします。これはミキサーのパンを左右に振っているのではなく、LとRに割り振られた2本のフェーダーを個別に動かしている状態なので、ただのパンよりも面白い効果が期待できます。実際にミキサーでやってみると良く分かるんですが、パンにレベルの要素が絡んできて、音像が前に出たり、後ろに引っ込んだりするような感じになります。

 3. ノートデータとプログラムチェンジ以外にQY10が送れるのはピッチベンド情報だけで、くわえて分解能が4分音符につき24しかないので、ピッチベンドは打ち込みまくりました。普通の使い方はもちろんのこと、ひとつひとつの音にすべてピッチエンベロープの効果が出るようにしたり、ビブラートの効果を出すために曲中ずっと隙間なくベンドデータを打ち込んだりしました。また、ピアノの音色などは、一応マルチサンプリングされているんだけれども、その差がはっきりしすぎていて明らかに音が違います。そこを利用すると、たとえばA5からサンプルが切り替わるなら、C6をピッチベンドで1オクターブ下げた音のC5と、普通のC5とは当然音色が違うわけです。ちょっと地味ですが、古い安いPCM音源だったら大抵は使えるワザですし、たまに意外といい音になったりします。

 4. QY10は音色のエディットがまったくできないので、以上のような苦労をしてきたわけですが、ことドラム音色に関してはピッチベンドすら効かないという念の入れようで、これにはYAMAHAの悪意さえ感じました(まあ、そこまでしたかったらRY30を買えということなのですが)。しかし、QY10のドラムは、発音数を確保するために、ドラム音色ひとつひとつを取るとモノフォニックなのです。つまりスネアドラム1の発音が終わらないうちにもう一度スネアドラム1を発音させると、それまで鳴っていたスネアドラム1の余韻はカットされてしまうわけです。そこを利用して、リリースの長めのスネアやクラッシュシンバルをカットしたいところで、ベロシティが1の同じ音色を発音させると、リリースがスパッと切れて、アタックを強調する形になるのです。あとは月並みにレイヤーするぐらいしか、ドラム音色のエディット方法は見つかりませんでした。個人的には、のちにこの問題は安いファミリーキーボード(型番忘れた)を導入すること(これまた友人Sの恩恵)で解決し、そのキーボードのドラム音は、それまでのうっぷんを晴らすかのごとく散々にベンディングされました。

QY10は、あのソフトキーの持久力の悪さを除けば、ほぼ文句なしの出来。QY20ではなぜか失われてしまったテンキーの装備も高く評価できたのに残念です。狭いLCDが苦しくてしょうがないという人には向かないかも知れませんが、バンドマンの先輩が使っていたという実績もあり、操作性は決して悪くありません。一曲つくっちゃうともうメモリがなくなってしまいますが、中古価格は1万円ぐらいですから、キー(特にenterキー)がちゃんと効くのを確認してから、フレーズメモ用に購入してもいいでしょう。

 

(1998.05/29)


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