KORG X3R

 

浪人中バイトをして、DATデッキの次のでかい買い物がこのX3Rでした。最初はQY300を買う予定で楽器屋に足を運んだのですが、ちょうどそのときこのX3Rが手の届く値段で店頭に並んでいたわけです。ほぼ衝動買いに近いかたちで手に入れたはいいものの、あまりに大きい箱のために自転車に乗っけて、それを押しながら家まで炎天下を歩くこと30分。ひたすら疲れました。

なぜ、X3ではなくX3Rなのか、と訊かれると「安いから」と答えるしかなさそうですが、買った当時は入力用の安いキーボードを借りることができたので困らなかったし、ラックのシーケンサといってもいったん慣れてしまえば、使いにくいということはまったくありませんでした。
その後、大学に入学して、実家を去るときにその入力用のキーボードとはおさらばしたので、早々にその代価品を手に入れる必要がありました。それがFZ-1だったわけですが、本来X3とFZ-10Mであるべきシステム(ワークステーションにはやはり鍵盤があって、サンプラーはラックであるべきというイメージだけでなく、FZ-1が1MBなのに対して、FZ-10Mは標準2MBのメモリを持ち、バックライトも備えていたからです)を逆にする意義は、強いて言うなら、安上がりで、X3Rが4アウトである(X3は2アウト)ということぐらいです。いずれにしてもX3Rは上のカーソルキーがイカれるまでの3年と少しのあいだ、メインマシンとしてシステムの中枢でがんばってくれました。

どこで聞いたか忘れましたが、ローランドやヤマハに比べて、コルグの音はダークでヨーロピアンということらしいです。ヨーロピアンという言葉にはピンときませんが、たしかに若干派手さを押さえた音色であることは頷けます。X3Rの場合はフィルターにレゾナンスが付いてない(同様の効果をもたらすとしてColorというパラメータがあるけれど、耳障りで実用的ではありません)ので、なおさら暗めの音になります。それまでTG-300でレゾナンスにまみれていた私にとっては、レゾナンスに頼らない音作りを修得するためのいいギプスになったのかも知れません。
音作りはよくあるPCM(340マルチサウンド+164ドラムサウンド)といった感じで、基本的にふたつの波形(コルグでは今でもオシレータと呼びます)でひとつの音色を作ります。LFOには問題があって、LFOシンクをオンにすると発音中に次の音を発音させると、前のLFOに追従するのですが、何も発音していない状態からキーオンするとスタートポイントは一定なので、アタックにばらつきが出ないのです。TG300ではそれができたのですが、とても残念です。だからベロシティ1の音を通奏低音のように発音させておいて、そのLFOに他の音をのっけるというやりかたぐらいしかありませんでしたが、それもサスティンのある音にしか通用しませんし、ベロシティが1でもどうしても音が聞こえてしまうので無理があり、すぐにやらなくなりました。

アナログ時代からのコルグの常として、エフェクターはまずまずの充実ぶり。2系統というのは少ない気もしますが、そこをやりくりするのがまた楽しいわけです。レゾナンスがない代わりに、フィルターを閉じた音にキツめのフランジャーをかけて、モコモコした状態からフィルターを開けたりといったケンイシイの真似もしましたし、かなり倍音を削った音にフェイザーをかけてLFOの谷底辺りで炭酸の泡がはじけるような小さなノイズを発生させたりもしました。あと、シーケンサを走らせながらエフェクトのパラメータにアクセスできるというのが、TRINITYにもできない(後日、バージョンアップで実現されました)X3Rのすごいところで、演奏させながらディストーションのHotSpotとかいうパラメータをツマミで回すとこれがなかなか素晴らしいです。このパラメータはダイナミックモジュレーションを使えばモジュレーションホイールにアサインできて、コントロールチェンジでも変調できるのですが、それよりもあのこぢんまりとしたラフなツマミ(ちゃんと1ずつは変更できない)でゆっくりと動かしたほうが、値の飛ぶつなぎ目に特徴があってずっと面白いです。

LCDに表示できる情報量がたいしたことない割には、シンセもシーケンサも使いやすかったと思います。階層構造は浅くないんですが、どこのページに何があるか覚えてしまえばすぐに望みのパラメータにたどり着けます。シンセは多少操作に難があってもなんとかなるものですが、シーケンサはそうもいきません。その点X3RのシーケンサはLCDの小ささも手伝って表示が早く、かなりのスピードでイベントエディットができます。それになんといってもX3Rのシーケンサのパターンは非常に使い勝手がいいのです。QYシリーズのパターンの概念とは異なり、パターン用のトラックというものはなく、パターンとして製作し登録したデータは、16あるうちのどのトラックにはめ込んでもかまわないようになってます。したがって16トラックすべてをパターンで済ませることもできますし、ひとつのトラックにふつうの演奏データとパターンを混在させることもできます。さらにパターンのデータをふつうの演奏データとしてトラックに焼く(オープンする、という)こともできるのです。パターンのままだと、もちろんデータの浪費を防ぐことになるのだし、同じパターンばかり続いてると感じたら、フィルの1小節か2小節だけオープンして、エディットし直すというのも手です。

突然、上のカーソルキーの手ごたえがなくなったときは、本当に冷や汗が出ました。それからもしばらく使い続けましたが、次第に効きもマズくなっていき、使い物にならなくなる前に買い替えなくてはなりませんでした。思えば若干4年間でしたが、私にはもっともっと長い年月だったように感じられたものです。

 

(1998.05/29)


YAMAHA QY10
KORG SIGNALDELAY
YAMAHA QY20
ZOOM STUDIO1202
YAMAHA TG300
ASCII オトッキー
KORG X3R
ENSONIQ SQR Plus32voice
KORG TRINITY
BIT2 シンセサウルス
Roland MC303
YAMAHA QY10追加分
  ROCKSTEREO
YAMAHA TX802
KORG TRINITYプレイバックサンプラー
今までに触ったことのある入力デバイスランキング
初めての冬号(99.11/24〜00.2/28)
トップページへ戻る